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森林インストラクターと歩く百花繚乱・真人山一周ツアー

 2023年4月21日(日)、森の学校「森林インストラクターと歩く百花繚乱・真人山一周ツアー」が、「守りたい秋田の里地里山50」に認定された横手市増田町真人山で開催された。参加者は38名。さくら名所100選・真人公園を起点に九十九折りの登山道沿いを登り、途中最も眺望が良い三吉神社を経て標高390mの真人山山頂へ。帰路は、北に向かって下り、途中義経三貫桜を経て起点の真人公園に至る一周ツアー。ソメイヨシノやオクチョウジザクラ、オオシマザクラ、オオヤマザクラなどのサクラ類をはじめ、登山道沿いを彩る萌黄色の新緑と、オオカメノキやタムシバ、ユキツバキ、キバナイカリソウ、ナガハシスミレ、ミズバショウなど百花繚乱の草花を観察しながら、春の里山を満喫した。
  • 共催/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン、秋田県森林インストラクター会
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 講師・・・森林インストラクターの酒井さん、次田さん、花田さんの3名と、サポーターガールズの3名。 
  • 真人山一周コース・・・真人公園→三吉神社(標高350m)→真人山(標高390m)→義経三貫桜→倉狩沼→真人公園(約6kmの山道)
  • さくら名所100選&「守りたい秋田の里地里山50」・・・秋田のさくらの名所100選は、仙北市角館町桧木内川堤・武家屋敷、秋田市千秋公園、横手市増田町真人公園の3つ。また真人山400haが令和5年度「守りたい秋田の里地里山50」に認定された。
  • 「守りたい秋田の里地里山50」に認定された真人山地域の特徴については、「近年低山・里山ブームが広がり、真人山(標高390m)が山歩きの名所となりつつあり、地元の子供たちを対象に親子自然観察会も地元のネイチャーガイドを中心に頻繁に行われており、身近な自然に親しめる格好の場所となっています。登山口である真人公園では、毎年春にたらいこぎ競争を含む「さくらまつり」、秋には地域のりんごの収穫を祝う「りんごまつり」が行われています」と記されている。
  • ソメイヨシノ・・・江戸時代後期に開発され、美しく生育が早いことから、たちまち全国に広まった。この品種は、オオシマザクラとエドヒガンの天然交配による自然雑種で生まれたといわれている。オオシマザクラは、緑色の新葉の展開と同時に大輪の花を比較的多く咲かせる特徴をもつ。エドヒガンは、葉が出る前に淡い紅色の花を咲かせる。この両者の特徴を併せ持つ人気のソメイヨシノが生まれた。
  • 名前の由来・・・江戸時代末期から明治初期に染井村に集落を作っていた造園師や植木職人達によって育成された。吉野山に多いヤマザクラと混同される恐れがあったことから、染井村の名を取り「染井吉野」と命名された。
  • 真人三十三観音・・・1863年、天下泰平・国土の平和などを願って建立された。明治の廃仏毀釈の影響を受けて散逸したが、その後、満福寺住職をはじめ有志の人々によって再建されたという。 
  • オオバクロモジ・・・幹や枝が緑色をし、枝を折ると芳香があることから、和菓子の楊枝に欠かせない樹木である。芳香、殺菌力、丈夫さなど、他の木には代えがたい価値がある。葉は枝先に集中し、新しい葉が展開すると同時に黄緑色の小さな花を10個ほどつける。 
  • ハリギリ・・・枝にトゲがあるが、同じウコギ科のタラノキ同様食用になる。ただし、タラノキに比べるとアクが強く、味が劣ることから、アクダラ、イヌダラなどと呼ぶ地方もある。 
  • オオカメノキ・・・早春、アジサイに似た白い装飾花をたくさんつけ、北国の山に春がきたことを告げる。亀の甲羅のような大きな丸い葉、夏から秋にかけて実る赤い果実は、柄まで赤いのでよく目立つ。紅葉も美しい。山の鳥たちは、秋の赤い実を食べ、カモシカは冬芽を好む。 
  • ヤマウルシ・・・若芽はタラノメと似ているが、間違っても触らないように。樹液や葉の汁に含まれるウルシオールという油脂成分がかぶれの原因となるので注意。若い枝は赤味が強い。(上右写真:花が咲く頃のヤマウルシ) 
  • モミジイチゴ・・・春、5弁の白い花を下向きに咲かせる。6月下旬、ツキノワグマが繁殖期に入ると、黄色に熟す。木苺(別名キイチゴ)の中で最も美味しい。林道の脇など日の当たる所に大きな群落をつくる。実が熟す頃、生後1歳半の子グマが夢中でキイチゴを食べている間に子別れをする。これをマタギは「イチゴ落し」と呼んでいる。 
  • ヒトクチタケ・・・春~夏、枯れて間もないマツに発生する。表面は光沢がある。干し魚のような臭いがあり、傘の裏には昆虫がいることが多い。その臭いは、胞子を風だけでなく、虫たちにも運んでもらうためであろう。 
  • キバナイカリソウ・・・名前の由来は、花の形が船の錨(いかり)に似ていることと、花の色が淡い黄色だからキバナイカリソウ。若芽、若葉を食べる。花を野菜サラダに散らし入れると、さわやかで美しい。地上部を乾燥させた薬草は、滋養強壮薬として用いられる。 
  • 里山に自生するサクラで、一番早く咲くオクチョウジザクラ・・・花を横から見ると、開き方が漢字の「丁」のように見えることから、「丁字桜」。その変種で、日本海側の多雪地帯・奥地に自生することから、「奥丁字桜」と書く。
  • ナガハシスミレ(別名テングスミレ)・・・タチツボスミレの仲間で、距は上向きで、スミレの仲間では最も長い。その細長い花の距を、天狗の花に例えて、別名テングスミレと呼ばれている。 
  • コシアブラの若芽・・・タラノメと並び人気の山菜だが、秋田ではほとんど食べなかった。しかし、最近は山菜ブームに乗ってポストタラノメ的存在になりつつある。幹がブナのように白く、枝の先に5枚の葉を掌のようにつけているのが特徴。タラノキのようにトゲがないのも人気の秘密かもしれない。 
  • 多雪地帯に適応したエゾユズリハ・・・ユズリハの変種で、多雪地帯の日本海側の山地に多く自生する。多雪地帯では高さが1mにも満たないほど低く、下部が地を這うなど、多雪地帯に適応しているのが分かる。ユキツバキ、ヒメアオキなどの日本海要素の常緑地這植物とともに、ブナ林などの林床によくみられる。
  • 春になって若葉がのびると、古い葉は「若葉に譲る」ように散ることことから、親が成長した子にあとを譲るのにたとえて、家系が途切れることなく続く象徴とされ、めでたい正月の飾り(門松、しめ飾り、鏡餅)に使われている。 
  • タムシバとコブシの見分け方・・・花の下に葉があるかどうかで見分ける。上写真:タムシバの花の下には、葉がつかないが、コブシは花の下に小さな葉が一枚ついているのが見分け方のポイント。
  • ホオノキの若芽
  • ツルシキミ(ミカン科) ・・・ミヤマシキミの、北海道、本州の日本海側の多雪地帯に適応した変種。積雪に適応して茎の下部が地を這い、高さは30-100cmほどになる。枝はしなり、折れにくい。花は白色で、枝先に散房状の円錐花序を出す。
  • ウリハダカエデ・・・緑色のスベスベした樹皮は、マクワウリの実に似ているのが最大の特徴。山地のやや湿り気のある雑木林などに生育する雌雄異株の落葉高木。新芽と同時に細長い総状花序を垂らし、淡い黄緑色の小さな花を咲かせる。株が育つとオスからメスに、環境が悪化した場合もメスに性転換する不思議な特性をもっている。高さ8~10m。
  • 花かんざしを吊り下げるキブシ・・・早春の野山で他に先駆けて咲き、まるで黄色い暖簾を吊り下げたように長い花序を垂らす。一見、舞妓さんの花かんざしのようにも見える。雌雄異株で、雄株の花穂は長く、雌株は短い。
  • イワガラミ・・・若葉を摘むとキュウリの香りがする。山菜として利用される。茹でてさらしてから、おひたしや和え物に。
  • 途中最も眺望が良い三吉神社(標高350m)・・・田んぼが広がる横手盆地から遠くは鳥海山まで見える。
  • 横手盆地の広さは日本一・・・横手盆地は、北部を仙北平野、中南部を平鹿平野と呼ぶこともあるが、その大きさは総面積約694km²。2位の松本盆地480km²に対して約1.5倍の差がある。この広大な田んぼに水が張られると、目の前一面が湿原に変化したような最高の絶景を拝むことができる。
  • 真人山で観察撮影した生き物たちの解説・・・ニホンリス、ニホンノウサギ、シジュウカラ、ヤマガラ、アオゲラ、アカゲラ、オオルリなど
  • 野鳥の会探鳥会 真人山でバードウォッチング・・・5月12日(日) 真人山で開催。真人公園駐車場8時集合。参加費 無料(申込不要)。5月の真人山は、カラ類やキツツキ類、オオルリ、キビタキなど夏鳥のさえずりがきれいだという。
  • 三吉神社にて記念撮影
  • ユキツバキ・・・秋田県内では主に県南地方に自生し、北限のユキツバキとして知られている。高さは1~2mと低いのは、雪の下に潜って、寒さや乾燥から体を守るためである。だからユキツバキは、小さくなる方向に進化したと言われている。雪の重みで折れないよう、幹がしなやかである。樹形は垂直に立ち上がるのではなく、枝が地を這うように伸びて、ほふく型の樹形をしている。さらに、種子だけでなく、地面に押し付けられた枝が、地面についた点から根を出して、いわばクローンによる繁殖も行っている。空間を巧みに棲み分けて進化したとはいえ、生命力の凄さに驚かされる。
  • 花の違い・・・ユキツバキ(上左)は花びらが全開しているが、ヤブツバキ(上右)は花びらが半開している。またユキツバキの雄しべは黄色い、ヤブツバキの雄しべは白い。
  • 満開のユキツバキを鑑賞しながら真人山山頂へ(標高390m) 
  • 新緑のシャワーを全身に浴び、広い道沿いの植物を観察しながら北方向に下る。 
  • ふきのとう・・・虫によって、雄花から雌花へと花粉が運ばれると、実を結ぶ。雌花のフキノトウは、30~50cmほどに茎を伸ばす。初夏になると、茎の頂は白い冠毛をつけたフワフワの種で一杯になる。パラシュートをつけた種は、風に乗って遠くへ飛ばされる。ちなみに雄花は、虫に花粉を運んでもらうと、茶色く枯れてしまう。
  • マルバマンサク 
  • ミツバアケビの花 
  • アズマヒキガエルの交尾と産卵・・・♀は、♂の半分ほどしかいない。だから雪解けの湧水池や沼、水溜りでは、多数の♂たちが♀を巡ってカエル合戦を繰り広げる光景をよく見かける。
  • 隠れた名所・ミズバショウ群落
  • ショウジョウバカマ/ヤマドリゼンマイ
  • ヒメアオキ/ニワトコ
  • タラノメ/ナツトウダイ
  • オオウバユリ/カタクリ
  • ヒメギフチョウの食草・トウゴクサイシン
  • エンレイソウ/カキドオシ
  • タチツボスミレ/ ルリシジミ
  • 笹藪を刈り払った近道コースを辿って義経三貫桜へ
  • 義経三貫桜伝説・・・昔、真人山から仙北街道に通ずる古道周辺は、桜の神域であった。1187年、頼朝に追われた義経が平泉に亡命する。その際、加賀の国安宅の関を逃れ、由利の山越えをして、東成瀬村手倉~仙北街道~平泉に向かう途中、この古道にさしかかった所で一休みした。武蔵坊弁慶は、崖上に見事なオオヤマザクラを見つけ、大きめの枝をもぎ取った。そこへヨボヨボのお年寄りが現れ、「この桜は私が自分の身と同じように大事にしているもの、何と心無い人がいるのだろう」と悲しまれた。義経一行は深く謝り、三貫の銀を払って許しを乞い、通行させてもらったと伝えられている。現在の桜は、昭和63年4月に、この義経三貫桜伝説をもとに植えられたものである。 
  • オオヤマザクラ・・・北海道、本州、四国に分布。特に北海道、東北を代表する野生のサクラである。花や同時に開く若葉は、赤みが強いのでベニヤマザクラとも呼ばれている。枝は上向きに伸び上がる傾向が強い。 
  • アブラチャン・・・キブシと同じ頃、葉に先立って星のような形の淡い黄色の花を咲かせ、山の春を鮮やかに彩る。チャンとは、瀝青のことで、天然アスファルトや石油など炭化水素類の総称。材や果実が油分を多く含み、生木で燃えやすいことが名前の由来。昔は、果実や枝から油を搾り灯油として使った。油分が多いので、薪炭や山で火を焚く時に用いられた。        
  • 義経三貫桜にて記念撮影